【完】 After Love~恋のおとしまえ~
サトシは笑いながら、「おいで」と手招きをして書斎に向かった。
そして、机の引き出しから手帳を取り出すと、そこに挟んであった一枚の写真を見せてくれた。
そこに写っていたのは、その人形を抱いた小さな女の子とサトシ。
病室での写真だ。
「この子、前の病院での俺の患者さん。ずっと入院している子なんだけど、俺に懐いてくれてね。今回の俺の異動をすごく寂しがってくれてさ。自分の宝物の人形を、お別れにって俺にくれたんだ」
写真の中の女の子を、サトシが愛しそうに指でなぞる。
「大切にしていた人形を俺にくれて。最後の日なんて、別れを惜しんで泣いてくれて。俺、すごく嬉しかったんだ。そこまで患者さんと心が通じたのって、初めてだったから。俺、この写真を見るたびに、仕事頑張ろうっていう気持ちになるんだ。立派な医師になろうって思うんだ。この写真と、この人形……俺の宝物だよ」
私には、恋人選びにおける何より大切な判断基準ある。
それは「相手を尊敬できるかどうか」だ。
サトシがその人形を大切にしているところ、すごく素敵だと思う。
そして、仕事に向かうその姿勢を……
私は尊敬するよ。