【完】 After Love~恋のおとしまえ~


「このCD、どうしたの?」

洋楽しか聴かないサトシの車の中に邦楽のCDがあれば、すぐにピンと来てしまう。

「それ友達が置いてったんだ。けっこういい曲入ってたよ、聴く?」

友達が置いていった?

……ももちゃんが置いていったんでしょ?


赤信号で止まると、サトシは私の手からCDを取り、カーステレオに入れた。

私もよく知っているアーティストの切ない失恋ソングが流れはじめると、私の涙腺はいきなり緩んできた。


私はただ、普通に幸せな恋がしたいだけなのに。

恋人に、自分だけを見ていて欲しい。

それだけのことなのに、どうしてこんなに上手くいかないのだろう。


コントロール不能となった涙腺は、容赦なく涙の雨を降らせる。

「どうした?」

いきなり泣き出した私に、サトシが面食らったような声を上げた。

私は声を押し殺し、慌てて顔を窓に向ける。

けれども泣き続けている気配は、容易に相手に伝わってしまうもので。

「友里?」

私の名を呼んだサトシは、一瞬間を置いて、それから……

いきなり笑い出した。
< 236 / 595 >

この作品をシェア

pagetop