【完】 After Love~恋のおとしまえ~
「このCD、どうしたの?」
洋楽しか聴かないサトシの車の中に邦楽のCDがあれば、すぐにピンと来てしまう。
「それ友達が置いてったんだ。けっこういい曲入ってたよ、聴く?」
友達が置いていった?
……ももちゃんが置いていったんでしょ?
赤信号で止まると、サトシは私の手からCDを取り、カーステレオに入れた。
私もよく知っているアーティストの切ない失恋ソングが流れはじめると、私の涙腺はいきなり緩んできた。
私はただ、普通に幸せな恋がしたいだけなのに。
恋人に、自分だけを見ていて欲しい。
それだけのことなのに、どうしてこんなに上手くいかないのだろう。
コントロール不能となった涙腺は、容赦なく涙の雨を降らせる。
「どうした?」
いきなり泣き出した私に、サトシが面食らったような声を上げた。
私は声を押し殺し、慌てて顔を窓に向ける。
けれども泣き続けている気配は、容易に相手に伝わってしまうもので。
「友里?」
私の名を呼んだサトシは、一瞬間を置いて、それから……
いきなり笑い出した。