【完】 After Love~恋のおとしまえ~


「そうだ、これ、プレゼント」

赤信号になったとき、サトシはポケットから小さな箱を取り出した。

リボンのかかっているその箱は、かつてサトシが買ってくれた指輪と同じブランドのものだ。

「前に俺があげた指輪とおそろいのデザインのネックレスがあったから、買ってきたんだ」

「……」

「あの指輪……俺があげた指輪、どうした?」

「……もうない」

「そっか。捨てちゃったか」

仕方ないよな、とサトシが悲しそうに呟いた。


嘘よ。

本当は、なくなんかない。

捨ててなんかないよ。

教えないけどね。


「じゃあ、あの指輪、もう一回買ってくるよ」

「いらない」

「だったら……他に欲しいものがあったら、何でも言って! 俺、たいていの物は買ってあげられるから」


ねぇ、サトシ。

私が欲しいのは、物なんかじゃないんだよ。

あのころも、今も。

物が欲しいわけじゃないの。
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