【完】 After Love~恋のおとしまえ~
サトシは、私の肩からゆっくりと手を離すと、フラリと近くのベンチのところに歩いて行き、そこに腰をおろした。
私もその隣に、そっと腰をおろす。
「信じてもらえない自分のふがいなさが、情けないよ」
「そんなこと言わないで」
「もう俺、立ち直れないかも。一生、誰も好きにならないかも」
「ううん、そんなことない。サトシはきっと、また誰かを好きになる。そうしたら、今度はその人のことを大切にしてあげてね」
谷本先生の、結衣子さんみたいに。
「……俺と友里の物語は、ハッピーエンドになれなかったな」
月を見上げ、サトシが小さく呟いた。
私も、月を見上げる。
「でもね、サトシ。ふたりの恋が成就することだけが、幸せな結末じゃないと思うの。恋が終わるとき、お互いが成長して、前向きに次のスタートを切れるなら……それもまた、ひとつの幸せな結末の形だと思う。私は、サトシに恋をして、成長したことが沢山あるよ」