【完】 After Love~恋のおとしまえ~
宇宙科学の難しい本を一生懸命読んだことも。
サトシのために料理上手になりたくて、料理の勉強を始めたことも。
シュノーケリングで海の怖さを知ったことも。
体験ダイビングだって、サトシがいなかったら、きっと一生チャレンジすることはなかったと思うし。
初めてのスノボでは、サトシと一緒に滑りたいがために、何度転んでも諦めずに頑張った。
今まで平和な恋しか経験したことがなかった私にとって、恋人の浮気に思い悩むことは初めての体験で、辛く苦しかったけど……
過ぎ去ってみれば、人生の経験値が少し上がった気もするし。
それから……
相手の置かれている状況や心の動きに、もっと敏感でいなければならないということも学んだ。
私にとって、サトシとの関係の中で体験したことは、プラス面もマイナス面もすべて含めて貴重な人生経験になったと断言できる。
「ねぇ、サトシは私と付き合って、少しでも成長したと思う部分はあった?」
「……サンテグジュペリの全作品を読破したから、教養が身についたかな」
サトシは、足元に視線を落として、そんなことを答えた。
「それだけ?」
「……嘘。俺は友里から、もっと、すごく大切なことを学んだよ」
サトシはすくっと立ち上がると、私の方に振り向いて、私の目をまっすぐに見つめて、こう言ったのだった。