【完】 After Love~恋のおとしまえ~
「三本の矢」とは、戦国大名の毛利元就(モウリ・モトナリ)が残したとされるエピソードだ。
ある日、元就は三人の息子に一本の矢を見せ、それを折るよう命じた。
息子達があっさり折ると、今度は三本の矢をまとめて折るように命じた。
しかし、束になった状態では、息子達は折ることができなかった。
元就は、「一本では折れやすくても、三本束になることで頑丈になる」ということから、「兄弟三人で力を合わせるように」と説いたのだ。
「三本の矢作戦だよ!」と言ったサトシは、おもむろに、残りの線香花火を全部まとめて持って火をつけた。
「ちょ、ちょっと、何やってるの!」
「こうすれば、丈夫になって落ちないはず!」
自信満々のサトシだったのだが――
「うおっ」
束で持っていた線香花火の火の玉はくっついて一つの玉になり、開始直後にあっけなく落ちてしまったのだった。
「線香花火って、むしろ束にした方が、あっさり落ちちゃうみたいね」
苦笑する私をよそに、サトシは握りこぶしを作って悔しがった。
「やられた。くっそー! あいつを……毛利元就を信じた俺がバカだった!」
思わぬところで逆恨みをされた、毛利元就なのだった。