【完】 After Love~恋のおとしまえ~
桜のつぼみが、争うように開花を始めたころ。
ある日曜日の午後に、私は想い出深い駅に降り立っていた。
朝から曇っていた空には、少しだけ晴れ間がのぞいている。
「あぁ、このお店……花火大会の日に、ここでアイスを買ったのよね」
駅前通りを、言いようもない懐かしさとともに歩きはじめると
「あの角にあった本屋さんは、なくなっちゃったのかぁ」
あのころとあまり変わっていないようで、やはり変わっている街並みに気づく。
かつて、恋人が住んでいた街。
別れてからいくつもの季節が過ぎ、二度とこの駅で降りることなどないだろうと思っていたけど……
腕時計に目をやると、あと十五分で午後四時になろうとするところだった。
ここから数駅先の谷本先生宅で行われる食事会の集合時間は、午後六時だ。
けれど――