【完】 After Love~恋のおとしまえ~
駐車場から見える病院の窓の向こうでは、白衣姿の人が廊下を歩いていた。
休診日とはいえ、入院患者がいるので、医師たちも働いているのだ。
あの廊下を、白衣を着たサトシが歩いていた日々は、もう遠い過去のこと。
「――お茶でも飲んでいく? あの喫茶店も懐かしいし」
ふいにサトシが、病院前の喫茶店を指差した。
それは、かつてももちゃんと対面すべく、彼女を待ち伏せするために私が使った喫茶店だ。
サトシはもちろん、そんなことは知らないのだけど。
「あの店で俺の仕事が終わるのを友里が待っていてくれたことも、よくあったよな」
そんなこともあったけど……
私にとってはそれよりも、ももちゃんを待ち伏せたことの方が、強烈に残っている記憶だ。
苦しくって痛かった、あの頃の気持ち。
悲しくて切なくて。
それでもどうしても、嫌いになれなくて。
なかなか手放せなかった恋心。