【完】 After Love~恋のおとしまえ~
私より十五センチほど高い目線に、ひきしまった腕のライン。
天然のままであろう、黒い髪。
五歳年上のサトシは医師であり、地方の大学病院の医局から東京の系列病院に派遣されてきたばかりなのだという。
このパーティーには先輩医師に誘われて来たのだけれど、こうした場で何を話せば良いのかよく分からないのだと頬をかいた。
「じゃあ、サトシさんの好きなものの話を聞かせてください」
「好きなものの話? じゃあ、宇宙の話をしてもいいかな。あのさ、ニュートリノって知ってる? ニュートリノっていうのはね……」
そのときサトシが話してくれたのは天文学と物理学が入り混じったような内容で、正直私にはよく理解できず、さほど面白い話とも思えなかったけれど。
それでも、
「良かったら、このあと二人で飲みにいかない?」
そんな誘いに思わず頷いたのは、今まで接したことのないタイプの男性だったからかもしれない。