【完】 After Love~恋のおとしまえ~
その夜はホテルに泊まり、翌日から新婚旅行に出発。
南の島で10日ほど過ごして帰ってくると、ポストには郵便物がたまっていた。
「スーツケースは、とりあえず玄関に置いておけばいいかな?」
「うん、お願い」
タクシーから下した荷物を彼が家に運び込む間、私は郵便物を持って家に入る。
すっかり冷え切っている室内に震えながら、慌てて電気と暖房をつけた。
それから、ソファに腰を下ろして郵便物の確認をはじめる。
ピザ屋のチラシやダイレクトメールがほとんどだったけれど、その中で一つ、
「……なんだろう、これ」
気になる物があった。
A4サイズの封筒だけれど、三センチほどの厚さがある。
触ってみたところどうやら中身は緩衝材で包まれているようで、重くはない。
宛名はパソコンで作られたらしきラベルシートで、宛先人の名は「澤田様」としか書かれていなかった。
彼に宛てたものだろうか。
それとも、私宛て?
裏を見ると差出人の名前が手書きで書いてあった。
なぜかカタカナで。
「オダ マキ」
その名前には、心当たりがなかった。