【完】 After Love~恋のおとしまえ~
「友里のことをカナに話たらさぁ、『絶対に一緒に行くべきだって伝えて』って言われたんだよな」
残業を終えた帰り道、駅から家に向かう途中でかかってきた電話の向こうで、サトシが
「まぁ俺も、できればそれがベストだとは思うんだけど」
そう言い添えた。
厚い雲に覆われた月は完全にその姿を隠しており、私が手にしている薬局のビニール袋がカサカサと静かに音をたてている。
袋の中には、午後から収まらないでいる頭痛のための薬が入っていた。
「仕事なんて、いつでもできるだろ。帰国したらまた同じ仕事を探せばいいんだし」
サトシは、こともなげにそんなことを言う。
そりゃ、サトシとカナさんだったらそうだろう。
医師や看護師の資格を持っている二人なら、比較的容易にまた同じ仕事に就けるに違いない。
だけど、私の場合は――
一度辞めてしまったら、同じ仕事を得るのは、きっととても困難なことだ。