【完】 After Love~恋のおとしまえ~
私が泣き止むまでの間、谷本先生にはあのノートを読んでもらっていた。
渋い顔でページをめくる谷本先生は、読み終えると、深いため息をつきながらノートを閉じた。
それから、どこか困ったような表情でこめかみを揉む。
「まぁ、俺はえらそうなことを言える立場じゃないんだけどさ……」
自らも浮気をし、それによって離婚にまで至った谷本先生は、そんな前置きをしてから、きっぱりとこう言い切った。
「友里ちゃんのご主人とこの人、たぶん、体の関係まではないよ」
「え……どうしてそんなことが分かるんですか?」
「このノートを読めばだいたい分かるだろ。『抱きしめてくれた』とは書いてあるけど、『抱いてくれた』とは書いてないし」
それはそうだけど……
「やたらポエムっぽい内容も、深い関係ではないと思わせるんだよなぁ」
谷本先生は顎に手をあて、それから何かを思いついたかのように私に向かって人差し指を立ててきた。
「あのさ、たとえば、抱きしめてキスはした。手もつないだ。だけど、それだけだったら? それ以上の関係は一切なかったとしても、友里ちゃんは許せない?」
「当たり前ですよ!」
拳を握る私の前で、「あ……そっか」と谷本先生が頭をかいた。