【完】 After Love~恋のおとしまえ~


彼の書斎を片づけているときに見つけたそれは、私も知っている近所のレストランのレシートだった。

オーナーシェフが一軒家でやっている、雰囲気のいいイタリアンレストランだ。

一か前の金曜日の日付入りで、「二名」と客数が記載されていた。

会計時間から、彼が、誰かとそこで夕食を共にしたのだということが分かる。


しかしそのレストランは駅から近いわけでもなく、平日の夜にわざわざ地元以外の人を連れていくとは考えにくい場所にあるのだ。

そして、彼には自宅近辺に、夕食を共にするほど親しい友人知人はいないはずだ。

……ただ一人、近所に住むその女性を除いては。

「その一か月前のレストランのレシートは、その人と一緒に行ったものなのだと思います。だとすれば、少なくとも一か月前までは、二人は続いていたということになりますよね」

ああ、そういえば、携帯も。

日本の携帯を解約しないでそのまま持って行ったことも、もしかしたら彼女との連絡手段を常に確保しておきたいからだったのかもしれない。
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