【完】 After Love~恋のおとしまえ~
待ち合わせ時刻から五分ほど遅れて、私は約束の店の前に到着した。
先に店に着いていてはいけない、というのは谷本先生のアドバイスだ。
私は相手の顔を知らないけれど、向こうは私の顔を知っている可能性がある。
確かに、好きな人の妻がどんな女か、そっと偵察に来ていたことがあったとしてもおかしくはないだろう。
そのため、先に店内にいることによって相手に入り口から顔を確認されないように、との配慮だった。
本当の待ち合わせ相手が妹ではなく妻だとバレたら、彼女は私と話さずに逃げるかもしれないからだ。
木製のドアの前に立ちごくりと息を飲んだとき、ふいにドアが開き中から二人連れの女性客が出てきたので、慌てて身をひるがえし、少し離れた電信柱の陰に身を潜めた。
速さを増した鼓動が落ち着きを取り戻すのを待ってから、念のため電話をかけてみる。
すぐに電話に出た彼女は、自分はすでに店内にいると伝えてきた。
「私ももうすぐ着きますので」
そう伝えると携帯をバッグにしまい、私は店の入り口に向かって一歩を踏み出した。