【完】 After Love~恋のおとしまえ~


ケーキが美味しいと評判のその店は、小花柄を基調にしたかわいらしい内装が女性に人気で、また駅前という好立地条件もあり、いつも適度に混んでいる。

その日も、空いているテーブルは二つしかなく、他はすべて埋まっているようだった。

入り口から店内に視線を巡らすと、左奥の席に座っている女性が、目を見開いて私を凝視していることに気がついた。

赤いペンを右手に握りしめている。

……あの人だ。

案内に出てきたウェイトレスに「待ち合わせです」と早口で告げると、私はその左奥の席に向かった。

「小倉さんですよね? お待たせしました。はじめまして、澤田です」

私の言葉を聞いたその人は、

「うそつき」

赤ペンをテーブルに投げ出した。
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