【完】 After Love~恋のおとしまえ~
彼女の言葉を無視して、私は席に着く。

ウェイトレスにコーヒーを頼むと、私は彼女にまっすぐ目を向けた。

彼女は、私が妹ではなく妻であることを知っているようだった。

「妹じゃないじゃない。うそつき。うそつき」

視線をテーブルに落としたまま、ぶつぶつとそんなことを言っている。

私に対して言っている、というよりは、独り言のようだった。

視線を落としたままの彼女を、私はまじまじと観察する。


折れそうなほどに細い体。

顔色の悪い、青白い肌。

ホラー映画に出てきた貞子を彷彿させる、顔にかかり気味の長い髪。

その髪の隙間からのぞく、左目の泣きぼくろ。

決して不細工ではないけれど、陰鬱とした雰囲気の女性。


――なぜ、こんな人と?


それが、私の正直な感想だった。

よりによって、なぜこんな人を浮気相手として選ぶのだろう。

もっとマシな人、世の中に山ほどいるでしょう?

こんな人、全然好みのタイプじゃないでしょう?
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