【完】 After Love~恋のおとしまえ~
門灯に照らされた表札に、じっと目を向けた。
きっと、親は知らないだろう。
娘が既婚者と関わっていることなど。
考えてみたら、突然現れた私の話を、ちゃんと聞いてくれるのだろうか。
「うちの子に限って」というありがちな思い込みから、信じてくれないのではないだろうか。
――いや、大丈夫。私の手には、この証拠のノートがあるのだから。彼女直筆の、証拠のノートが。
サトシの方に顔を向けると、力強く頷いてくれた。
それは、頑張ってこいという激励の合図。
大きく息をつくと、背筋をまっすぐに伸ばして、私はチャイムを押したのだった。