【完】 After Love~恋のおとしまえ~
はい」
インタホーンに出た相手は、中年とおぼしき女性の声をしていた。
おそらく彼女の母親だろう。
一呼吸おいて、「澤田と申しますが……」と話しはじめたところ
「娘は出しませんから!」
と、いきなり敵意をむき出しにしたきつい口調で断言された。
「あの……」
「帰って下さい」
苗字を名乗っただけで、この対応。
ああ、そうか、と額に手をあてる。
「親には言われたくないはず」と思った私の読みは、大きくはずれていた。
彼女はすでに、私のことを母親に話しているようだ。
だから、万が一家に来たら追い返してくれとでも言ってあったのだろう。
もっとも、彼女がどこまで母親に本当のことを話しているか分からないので、やはり話し合わなければならない。