【完】 After Love~恋のおとしまえ~
出てきたのは、恐ろしく恰幅の良い中年女性。
娘が折れそうなほどに細かったことを考えると、あまりに対照的な母親の体型に一瞬呆気に取られてしまった。
「そのノートを見せてください」
母親の言葉に我に返る。
ノートを渡そうとした次の瞬間、証拠のノートを破られでもしたら困ると思ったけれど、自分から読んでみてくれと言い出したのだから、ここで渡さないわけにはいかなかった。
「こちらです」
玄関の門扉越しにノートを差し出すと、母親は奪い取るように乱暴にそれを受け取った。
それから、母親はノートを開き、最初のページに視線を落とす。
三十ページに渡りぎっしりと書かれたその内容を読み終わるのにはかなり時間がかかり、私は息苦しいほどに長い時間を、ただ黙ってその場に立ちすくんでいた。
最後のページまで読み終わると、母親はノートを閉じた。
そして、またしても、私の常識をはるかに超える言葉を口にしたのだった。
「とてもよく書けていると思います」