【完】 After Love~恋のおとしまえ~
私の手からペットボトルが離れ、ひざを滑って足元に転がった。
ふたを閉めてあったのが幸いだった。
「なに言ってるの?」
眉をひそめた私に、
「あ、ごめん、本当にって意味じゃなくて!」
サトシが慌てて、手を顔の前で左右に振る。
「よりを戻したことにしてみようかって意味」
「それって、どういう意味?」
恋人に浮気された過去を持つ私は、「浮気されること」を何よりも嫌悪する。
一方、恋人が元カレと復縁した過去を持つ翔さんは、「元カレと復縁されること」が何より嫌に違いない。
だから――
私のトラウマを知っていながら裏切った彼への報復として、同じく彼のトラウマとなっていることをやり返したらどうか、というのがサトシの提案だった。
「友里をこれだけ泣かせたんだから、澤田さんにだってペナルティが必要だろ」
「そうだけど、そんなことしたら、そのまま離婚に発展しそうじゃない」
「離婚はしたくないんだ?」
「そりゃ……」
まずは、彼と話したい。
会って、ちゃんと話し合いたい。