【完】 After Love~恋のおとしまえ~
そうして、避け続けつつも遭遇を繰り返していたある日、道で会った彼女が突然号泣しながらこんなことを言ってきたのだそうだ。
「想い出作りに協力してくれるって言ったのに、どうして何もしてくれないんですか!」
唐突のことに慌てた彼が、君の言う想い出作りとはいったいどういうことを指すのかと尋ねたところ、彼女は
「恋愛がしたい」
と答えたという。
自分には決まった相手がいるからそれは無理だと首を振ると、彼女は彼の腕をつかんで訴えてきたそうだ。
「だったら、疑似恋愛でいいです。今の私には、生きる希望が何もないの。ただ手をつないでピクニックにでも行きたい。抱きしめられて、私にも生きる価値があるんだって感じたい。それすらもダメっていうなら、私なんてもう生きていない方がいいんだと思います」
「生きていない方がいいなんて、そんなこと言うなよ……」
「ピクニックにすら一緒に行ってもらえない女に、生きている意味がありますか」
さめざめと泣く彼女を前に、ついに彼は観念したという。
「分かったよ、ピクニックくらい一緒に行くよ」
「良かった!」と抱きついてきた彼女は、彼の胸に頬を寄せて、尋ねてきたのだそうだ。
「サンドイッチの中身は、何が好きですか?」