【完】 After Love~恋のおとしまえ~


それからというもの、散歩中に偶然会うたびに、彼女はしばしば手をつないできたというのだ。

「といっても、なるべく会わないように避けていたから、偶然会うのはせいぜい月に一、二回。それに、誓って言うけど、自分から手をつないだことは一度もないよ。彼女の方から勝手につないでくるんだ。正直、迷惑だったけど……」

「どっちからつなごうが、振りほどかなかった時点で同じことでしょ」

「もちろん振りほどいたこともあるよ!」

しかし、「そういうことは困る」と振りほどいたところ、また言われたのだという。

どうせ自分は価値のない人間なのだと。

価値のない自分など、また部屋に引きこもっていれば良いのだと。

そして泣くのだそうだ。

「手すらつないでもらえない女に、生きている意味がありますか」

せっかく引きこもりから脱却したのに、ここで突き放したらまた彼女は自分の殻にこもってしまうのかと思うと、彼はそれ以上拒むことができなかったという。
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