【完】 After Love~恋のおとしまえ~
「それで、せがまれるままにキスもしたってわけ?」
確かあのノートには、何度もキスをしてくれたと書いてあった。
「また泣かれるのも面倒だったし。それに言うんだよ、キスすらしてもらえない女に生きている意味が……」
「もうそれは分かったから」
「でも、唇にはしていない。頬と額に一回ずつしただけだから」
「いや、そんな主張は意味がないでしょう。だって、その後、結果的に体の関係を持ったんでしょ? さっきそう言ってたじゃない。誰と寝ても唇にはキスしないからなんて、風俗嬢の主張みたい」
呆れ返った私に、彼は予想外の反論をしてきた。
「寝たって何だよ。そんなことはしてないよ」
「え? だって、体の関係はあったって言ってたじゃない」
「そうだよ。それは認めたろ。相手から抱きつかれて、軽く背中に手を回したって。でも、寝たりはしてないから」
「……え!?」
なんと驚くべきことに、彼の言う体の関係とは、「着衣の状態で軽く抱きあった」ことを指しているようだった。
それは体の関係って言わないから!
「あのね、体の関係って、はっきり言えば『セックスした』っていう意味よ?」
「えっ、そうなのか!? 体が密着したら体の関係って言うのかと思ってたよ……だったら俺、彼女とは体の関係はないよ」
「……」
なんだろう、この会話の噛みあわない感じ。
ああ、これもまた、かつてのサトシとの会話のデジャヴな気がする。
――私って、結局こういうトンチンカンな人が好みなのだろうか?