【完】 After Love~恋のおとしまえ~
長い電話の途中で席をはずした翔さんは、庭のガーデンチェアに座って煙草をふかしていた。
彼の目線の先では、花壇の花々が風に揺れている。
「……でも翔さん、小倉さんから贈られたノートを保管していたんです。そんなものを大事に保管していて欲しくなかったな」
ぽつりとこぼれ落ちた言葉は、即座に否定された。
「あ、それは俺が保管しとけって言ったんよ」
「え?」
電話の相手は、「だってさぁ」と言葉を続ける。
「妄想気味でやばそうな女だろ? 行動がエスカレートしてきたら、もう引きこもりの更生云々って話じゃなくストーカーとして訴えないとやばいくらいになるかもしれないから、そのときの証拠としてとっておけって助言したんだ」
それはつまり、オダマキの写真立てを谷本先生が保管しておけと主張したのと同じことなのか。
「しかし、それにしても俺が言ったとおりだったろ?」
「え?」
「気の毒で幸薄そうな女には気をつけろって!」
……本当に。