【完】 After Love~恋のおとしまえ~
物思いにふけった私を、「無理だから!」という小倉さんの興奮した声が現実に引き戻した。
彼女は、ボランティア活動どころか、翔さんが一緒に散歩してくれなくなって以来、また滅多に外に出かけないようになってしまったのだと告白した。
「私だって、できることがあるならやりたいです。でも、誰にも必要とされてないんだから仕方ないでしょ。十年以上も引きこもっていた女を、今さらどこの誰が何に必要としてくれるっていうんですか」
涙声になった彼女の声は、泣き落としをしたときのそれとは少し様子が違い、それが何だか、これは彼女の本心なのかもしれないと思わせた。
小倉さんにできそうなこと。
それってなんだろう……と首をひねった次の瞬間、あることを思いついた。
それは素晴らしい思いつきのように思えて、私は慌ててバッグから携帯を取り出した。
携帯メールで急いでそれを書くと、送信ボタンを押す。
その直後、翔さんの胸ポケットの中で着信音が響いた。
「ちょっとごめん」と携帯を取り出した翔さんは、そのメールに目を通し……
「それ、いいかも」
独り言をこぼすと、座りなおして、小倉さんに声をかけた。
「あのさ、小倉さんに頼みたいことがあるんだけど」