【完】 After Love~恋のおとしまえ~
息子さんがまだ1歳のころ、カナさんのご主人に転勤の辞令が下ったという。
看護士の資格を持つカナさんは転勤先でも仕事を見つけることは可能だったものの、実家の近くにいた方が子育てと仕事の両立が楽だから、というただそれだけの理由で、転勤についていかなかったのだそうだ。
赴任期間がたった一年だったから、というのも理由の一つだったという。
けれども、赴任してわずか三か月が経ったころ。
ご主人が、くも膜下出血で亡くなったのだそうだ。
「近くにいたって、助けられなかったかもしれない。でも、もし近くにいたら、助けられる可能性だってあったかもしれない」
ずっと、そんな罪悪感を抱えて生きてきたという。
カナさんの話を聞いていて、ふと、翔さんの引きこもりの親友の話を思いだした。
人は皆、様々な過去や、それに伴う想いや痛みを抱えて生きている――