【完】 After Love~恋のおとしまえ~
ベンチをあとにし、ホテルに向かって歩きながら、今回の件を通してサトシの成長ぶりにいかに私が驚いたかということを話していた中で、
「カナさんのおかげなんでしょうね」
と伝えたところ、カナさんは「それは違いますよ」と首を振った。
「私と知り合ったときには、もう今のサトシだったから。友里さんやももさんとの関わりを経て成長したんだと思います。もちろん、その後、私との関係の中でさらに成長した部分もあると思うけど。人は、人との関わりの中で成長していくものですからね」
ホテルに着くと、カナさんに部屋に寄って行くよう勧められたけれど、それは断り、サトシによろしく伝えて欲しいと頼んだ。
「今回の騒動ではいろいろお世話になりました。サトシにも貴重な休日を使わせてしまったりして、カナさんとのデートの邪魔になりませんでしたか? すみません」
私が頭を下げると、カナさんは「とんでもない」と微笑んだ。
「友里さんの問題解決に力をかせて、サトシも光栄だったと思います。なにしろこれは、サトシにとっての『おとしまえ』だったんだから」
「え?」
「友里さんとの恋の、おとしまえ。サトシは友里さんの幸せを見届けるのが自分の義務だと思ってるって、前に教えたでしょ」