【完】 After Love~恋のおとしまえ~
カナさんと別れると、駅に向かいながら、私はこの激動の日々のことを思い出していた。
黒い波にのまれて必死にもがく中、私を取り巻く優しい人たちが、一斉に手を差し伸べてくれたこと。
いつかこの日々が遠い過去となり、黒い波の恐怖が記憶の彼方に去ろうとも。
手を差し伸べてくれた人たちの、その手のぬくもりは、永遠に忘れないでいようと思った。
そしてもし、私の大切な誰かが波にのまれたときは、何をおいても手を差し伸べてあげたいと思う。
人は、人との関わりの中で成長していく。
ならば私も、優しい人たちとの関わりの中で、優しい人になっていきたい。
改札を通ったところで
「友里!」
私の名を呼ぶ声がした。
振り返ると、雑踏をかきわけて走ってくるサトシの姿があった。
「頑張れよ、友里!」
大きく手を振るサトシに、負けないくらい大きく手を振り返す。
「もう大丈夫、ありがとう! おとしまえは、きっちりつけてもらったからね!」