【完】 After Love~恋のおとしまえ~
「――じゃあ、よろしく」
電話を切ると
「ごめんな、長々と」
サトシは私の方に振り向いた。
「ううん」
「さ、行こうか」
サイドブレーキを降ろそうとしたサトシの手を、待ってと私が止めた。
「ん?」
どうした? という様子で私の顔を見つめてきたサトシに尋ねる。
「ねぇ、この前、ももちゃんって人からメールが来たとき、高校時代の友達って言ったよね。でも今、電話の相手に『ももちゃん』って言ったでしょ? ももちゃんって、高校時代の友達じゃなくて本当は看護師さんなの?」
「えっ、いや……」
私の問いにサトシは口ごもり、視線をそらすと
「それは……少し考えさせてくれ」
そう言って、目を伏せた。
は!?
考えるって、何を?
まさか言い訳を?
まさかの言い訳シンキングタイム!?
ミーン、ミーンというセミの鳴き声だけが辺りを包む。
息苦しいほどの沈黙の時間が流れた。
しばらくすると、サトシがふっと顔を上げ、
「つまり、こういうことなんだ」
おもむろに説明を始めた。