生意気な彼は御曹司!?
「お帰り。小雪」
「ただいま。あのね、圭吾さん。話があるの」
お土産を渡すのも忘れたまま、私はコートを脱ぐと彼の前に正座をする。久しぶりに会った両親の顔が頭から離れない私は、すぐに本題を切り出した。
「圭吾さん。本当に私と結婚してくれるの?」
「ああ。もちろんそのつもりだけど」
圭吾さんの焦りのない言葉が、今日はとてもイラつく。
「私、エンゲージリングなんかいらないの。早く圭吾さんと結婚したい。お願いだからプロポーズして」
「……」
早口でまくし立てるように言うと、圭吾さんのプロポーズを待った。でも、いつまで経っても彼の口は開かない。
「圭吾さん?」
この期に及んで、貝のように口を閉じる圭吾さんの本心がわからなかった。
もしかして、私のことは遊びだったの?
責めるような言葉が出そうになった時、ようやく圭吾さんの口が開いた。
「小雪。俺さ、給料そんなに多くないし、貯金ない」
圭吾さんは躊躇いがちにそう言うと、小さく背中を丸めた。
「そんなこと気にしないでよ! 私、結婚しても会社辞めないし、こう見えても結構貯金しているのよ」
私はブランド品には興味がないし、服や化粧にもあまりお金をかけない。銀行の通帳には、それなりの金額が貯まっている。
圭吾さんが経済的な理由で私との結婚に踏み切れないでいるのなら、問題は解決だと思った。