生意気な彼は御曹司!?
いつの間にか駅前広場に辿り着いていたんだ……。
ひとり寒さに震え、光り輝くイルミネーションを見ていたら、圭吾さんが私の誕生日に見せてくれた夜景を思い出した。
ああ、そうか。圭吾さんがどうしてあの場所に連れて行ってくれた理由が、今、わかった。
きっと別れた奥さんと子供と、東京都庁に行ったことがあるんだろう。しかも東京都庁の展望台は無料だし……。
今まで気づかなかった事実が、パズルのピースのように次々とピタリとはまる。
圭吾さんのことを、好きだったのに……。
もう歩くことも、この場に立っていることさえも無理になった私は、駅前広場の中央でしゃがみ込む。そして人目もはばからずに声を上げて泣いた。
駅前広場を通る人々が、私を避けて行くのがわかる。それでも、どうしても涙を止めることはできなかった。
その時……。
「あの、大丈夫ですか?」
駅前広場でしゃがみ込み、声を上げて泣いているアラサー女なんて、怖くて誰も近寄りたくないはず。それなのに、親切に声をかけてくるなんて……。
「大丈夫……です」
声を震わせながら、返事をする。
「とても大丈夫そうには見えないですよ」
「本当に大丈夫ですから」
私を心配してくれたことには感謝するけれど、泣き腫らしたグチャグチャな顔を見られるのは恥ずかしい。