生意気な彼は御曹司!?
「先輩、起きて下さい。着きましたよ」
ええっ! もう朝?
慌てて瞳を開けると、斉藤くんの整った顔が目に飛び込んできた。
そうだった、私、斉藤くんと一緒にリムジンに乗っていたんだ!
一気に目が覚め、シートから上半身を起こす。すると斉藤くんは、開いたドアから先に外に出た。
「さあ、どうぞ」
「あ、ありがとう」
斉藤くんが差し出す大きな手に自分の手を重ねると、リムジンから降り立つ。すると前方には、重量感たっぷりのヘリコプターの姿が見えた。
「先輩はヘリに乗るのは初めて?」
「うん。初めて」
斉藤くんの手が腰に回る。
「きっと満足してもらえると思う」
「う、うん」
斉藤くんのスマートでさり気ないエスコートを受けながら足を進めて行くと、ヘリコプターに辿り着く。
「先輩、おいで」
先にヘリコプターに乗り込んだ斉藤くんが差し出す手に、自分の手を重ねると、力強く身体を引き寄せられる。ふわりと身体が浮かび上がった次の瞬間には、斉藤くんの胸の中に包み込まれていた。
一瞬だったけれど身体が密着してしまい、なんだか恥ずかしい……。
思わず俯くと、甘い声が耳元に届いた。
「さあ、座って」
斉藤くんの声は、年下とは思えないほど落ち着き払っている。
ますます緊張感が増してしまった私は窓際の席に腰を下ろしたものの、シートベルトを締めるのにもたついてしまった。すると斉藤くんの大きな身体が、覆い被さってくる。