生意気な彼は御曹司!?
「僕が隣にいるから、緊張しなくても大丈夫だよ」
そう言われても……。
突然縮まった距離に、身体が勝手に硬直してしまう。
「う、うん。ありがとう」
「いいえ」
ぎこちなく返事をすると、シートベルトを締めてくれた斉藤くんの身体が離れて行った。
鼓動がドキドキと高鳴るのは、初めてのフライトのせい? それとも普段とは少し違う大人びた様子を見せる斉藤くんのせい?
どちらにしても気持ちを落ち着かせようと大きく深呼吸をしていると、隣のシートに腰を下ろした斉藤くんがクスリと笑った。
「ねえ、こうすれば緊張しないよね」
自分のシートベルトを締め終わった斉藤くんの手が、私の手に伸びてくる。そして指を絡めるように、手を握られた。
重なり合った指と手のひらから伝わってくるのは、斉藤くんの体温。その心地いい温もりを感じていると、次第に気持ちが落ち着いてきた。
「斉藤くんのおまじないが効いたみたい」
「それは良かった」
ようやく緊張が解け始めると、ヘリコプターのスライドドアが閉まる。そして大きな音を轟かせながら、ヘリコプターのプロペラが回転を始めた。
パイロットが親指を立てると、私たちを乗せたリコプターが夜空へと舞い上がる。あっという間に小さくなっていく東京の街並みは、まるでミニチュアみたいで気分が高揚していった。
「先輩、ほらあそこがお台場。レインボーブリッジと観覧車が見えるでしょ」
「あっ、本当だ」