生意気な彼は御曹司!?
「ねえ、あんな男の話よりも今のあなたの気持ちを教えて」
斉藤くんの言葉に、どう答えていいのかわからない。
だって……。
「私は数時間前には圭吾さんと結婚しよう思っていたのよ。でも今は斉藤くんに心が傾いているの。こんなに簡単に心が揺れ動く女なんか……軽蔑するでしょう?」
自分の心に燻っていた想いを、吐き出す。
「軽蔑なんかしません。街で泣いているあなたと出会えたことを、僕は運命だと感じました。好きです。小雪……」
二度目の告白をされた瞬間、想いが溢れた。
私は彼のことが、好き……。
自分の気持ちをハッキリと自覚した時、手にしていたワイングラスが奪われる。テーブルの上にコトンと音を立ててワイングラスが置かれると、彼の大きくて温かい手が頬に触れた。
徐々にふたりの距離が縮まる。そして気がつけば、お互いの唇が隙間なく重なっていた。
甘いくちづけは、次第に深みを増していく。
もっと、もっと、あなたを感じたい……。
そう願った時、唇が離れ、ソファの上に身体を押し倒された。
この先の展開を想像するだけで鼓動が早鐘を打つ。そんな中、どうしても確認したいことがあった私は、彼の二重の丸い瞳を見つめながら尋ねた。
「斉藤くんは、離婚歴アリ?」
「僕は結婚したことはありません」
「斉藤くんは、子供がいる?」
「いません」
「斉藤くんは、お金に困っていない?」
「困っていませんよ」