生意気な彼は御曹司!?
斉藤くんは嫌な顔をせずに、クスクスと笑いながら質問に答えてくれた。けれどその微笑みも、すぐに真面目なものへと変化する。
「小雪。僕と結婚して下さい」
突然プロポーズをされた私は、驚きで思考が止まる。けれど、さらに続く斉藤くんの話で我に返った。
「……の、前に、小雪。実は僕……秘密にしていることがあります」
なに、これ……。嘘でしょう!?
数時間前に聞いたことがある言葉に、耳を疑う。それでも斉藤くんの告白は続いた。
「実は僕……あの会社の社長の息子なんです」
「ええっ!?」
社長の名前が斉藤だということは知っていたけれど、まさか彼が息子だったなんて……。
プロポーズの後にサプライズを受けた私の頭の中が、真っ白になる。
「驚いた? 今まで隠していてゴメンね」
初めのうちは驚きで声も出せずにいたけれど、しばらくすると次第に気持ちが落ちついてくる。
あのリムジンにヘリコプター、そしてこの素敵な別荘はきっと、社長のもの。
それから圭吾さんの経歴を調べることを簡単だと言っていたことも、彼の立場を利用すれば容易かったのだろう。
でも斉藤くんが御曹司だとわかっても、ちっとも嬉しくなんかない。
彼に相応しいのは、私じゃないから。
「斉藤くんには、若くてかわいいお嬢様の方がお似合いだと思う……」
これが斉藤くんのプロポーズに対する、私の答え。