生意気な彼は御曹司!?
「それ、本気で言ってんの?」
もしかして、怒っている?
普段より低い斉藤くんの声を聞き、胸がドキリと大きく波立つ。
「も、もちろん、本気」
けれど、プロポーズの返事は変わらない。
御曹司の斉藤くんと、平凡なアラサーの私とでは身分が違いすぎる……。
急に斉藤くんが遠い存在に感じた私は瞳を逸らす。すると彼は、予想していなかったことを口走った。
「誰が何と言おうと、僕は小雪以外の人と結婚する気はない。小雪と結婚できないなら、僕は今すぐ斉藤家と縁を切る」
「それはダメよ」
斉藤くんに向かって、大きな声を上げる。
「じゃあ、僕と結婚して」
頑なに私との結婚を望むのは、どうして?
若くもなく、特別美人でもなく、すごくスタイルがいいわけでもない私を選ぶ理由がわからない。
「斉藤くん、私との結婚にどうしてこだわるの?」
冷静になって理由を聞くと、彼の瞳が大きく揺れた。
「本音を言うと、会社なんか継ぎたくない。でも僕がわからないことを小雪は知っている。これからも、この先も、未熟な僕を支えて欲しい」
斉藤くんはいずれ、数千人の従業員のトップに立つ。そのプレッシャーは計り知れないほど大きいはずだ。
「私に斉藤くんを支えることができるかな……」
少しでも斉藤くんの力になりたいという思いが、心の奥に芽生え始める。