生意気な彼は御曹司!?

新卒採用で入社してきた斉藤くんは、女子社員に人気がある。高い身長に二重の丸い瞳。通った鼻筋に、笑うと見える真っ白い歯。アイドルのようにイケメンな斉藤くんは、確かに格好いい。

斉藤くんの指導員を任されると決まった時、同じ部署の女子社員からはもちろん、他部署の女子社員からも、すごく羨ましがられた。

実際、今日だって斉藤くんの爽やかな笑顔に見惚れてしまいそうになったし……。

癒される斉藤くんの笑顔を思い出していると、少し拗ねたような清水部長の声が耳に届いた。

「ふ~ん。で? 入力は終わった?」

「はい。終わりました」

急に斉藤くんの話題を口にしたかと思えば、すぐに仕事モードに切り替わる。一貫性のない会話に戸惑いながらも、入力作業を終わらせた。

「じゃあ、今日の残業はこれで終わりだな」

「はい。ありがとうございました」

残業に付き合ってくれたことにお礼を言いながら、パソコンの電源をオフにする。そしてイスから立ち上がると、思ってもみない事態に見舞われた。

清水部長の大きな手が、私の手首を捕らえる。あっという間に身体を引き寄せられた私の後頭部に、彼の手が伸びていった。

ひとつに結んでいる私の黒髪がハラリと解け、左右に揺れる。清水部長に髪を解かれたことを不思議に思っていると、突然、唇を熱く塞がれた。

なんで私、清水部長とキスしているの?

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