生意気な彼は御曹司!?

「そう。俺とじゃ嫌か?」

早すぎる展開に動揺せずにはいられなかった。けれど夢のような申し出を断る理由などない。しかも頭の中には清水部長と腕を組んで、ヴァージンロードを進む自分の姿がすでに浮かんでいる。

でも……。

「清水部長、本当に私でいいの?」

「いいのって、どうしてそんなことを聞くんだ?」

不安でいっぱいな私は、清水部長の切れ長な瞳を覗き込む。

「だって私、もうすぐ三十歳になるし、それに地味だし……」

会社には私より若くて可愛い子がたくさんいる。それなのに、どうしてアラサーのパッとしない私を選んでくれたのか、理由がわからなかった。

けれど私の不安を拭い去るように、清水部長の指が黒髪に絡みつく。

「オマエは自分の魅力に気づいていないんだな……この長い黒髪は綺麗でそそられるのに……」

「そそられるって……」

清水部長は恥ずかしげに俯く私の髪の毛を、一束掬い上げると唇を寄せる。そして指の間からハラハラと髪の毛を落とすと、顎に手を伸ばした。

上を向かされた私の唇は、再び熱く塞がれる。私は息を乱しながらも、ずっと胸に秘めていた想いを口にした。

「圭吾(けいご)さん……好き」

「俺も好きだよ。小雪」

オフィスに似合わない言葉が響くのを聞きながら、私たちは夢中でキスを交わした。

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