生意気な彼は御曹司!?
3.誕生日で……
『小雪の誕生日は俺に任せて』と、自信満々に言い切る圭吾さんの言葉を思い返しては、あれこれ想像してニヤける毎日を過ごす。
そして今日、私は三十歳の誕生日を迎えた。
圭吾さんは、いったいどこに連れて行ってくれるのかな。
期待で胸を膨らませながら、仕事を終えた私は一足先に、待ち合わせ場所のコーヒーショップに向かった。
三十分ほどすると、コーヒーショップに圭吾さんが姿を現す。
「小雪、お待たせ。それじゃあ、行こうか」
「うん」
コーヒーショップを後にすると、圭吾さんの腕に手を絡ませる。その行く先に、高くそびえ立つビルが見えてきた。
「小雪と一緒に夜景を見ようと思ってさ」
そう言いながら、圭吾さんは東京都庁を見上げる。
「うわぁ、楽しみ」
優しい笑みを零す圭吾さんの腕に寄り添いながら、エレベーターに乗り込んだ。
エレベーターから降りた私たちの目の前に、キラキラとまぶしい光を放つ東京の夜景が広がる。
「圭吾さん、すごく綺麗!」
夜空の星よりも綺麗な夜景を、うっとりとしながら見つめた。
「だろ? この夜景が俺からのプレゼントなんだ」
「ありがとう」
私がお礼を言うと、圭吾さんは照れたように頭を掻いた。けれど、その圭吾さんの表情がみるみるうちに曇り出した。
「小雪。給料の三ヶ月分のエンゲージリングをまだプレゼントできなくてゴメン……」
圭吾さんの胸のうちを知った私の心が、チクリと痛む。
「そんなこと気にしないで。この夜景がダイヤモンドの代わりだよ。素敵なプレゼントをありがとう、圭吾さん」
圭吾さんの気持ちが嬉しくて、腕にしがみつく。
ほんの少し期待していたエンゲージリングはないけれど、優しさに満ち溢れた圭吾さんが隣にいてくれたら何もいらない……。
私は人目も気にせずに、圭吾さんの身体に寄り添った。