インフォマニア・コンプレックス
「どうして、そう一所懸命に働かなければならないと思うのですか?」

砂場は、わざとノンビリした口調で、レイコに尋ねた。

その問いに、レイコは背筋を伸ばして、答える。

「仕事と社会に対する責任感からです。

 私の仕事には、私の娘や会社の従業員の生活、それに子供や家庭を持ちながら、 起業して仕事に打ち込んでいる女性の方々への希望となる責任があります。

 私はこのIT革命の時代が到来するのを予感して、ITを武器に、女性ならではのコミュニティや情報発信が出来るメディアを今から10年前に立ち上げました。

 その頃は、インターネットの存在を知っている女性もほとんど、いなかったような時代で、その中で、女性がどうすれば、より積極的に社会進出したり、いろいろな出会いやコミュニケーションが楽しめるのかを真剣に考えて、女性のための新しい情報環境の構築に勤めました。

そうした努力が認められて、「女性のためのニュービジネス大賞」を受賞
したり、多くのマスコミからも注目を集めております。」

「社長のお顔は、何度か、雑誌やテレビで拝見しましたわ。」

冴子が、横からタイムリーでナイスなコメントをいれてくれる。

「ありがとう。」

レイコがニッコリ笑って、冴子に微笑みかけた。
その表情には、自分のことを認められた嬉しさが溢れていた。
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