私は猫



それから私は鷹さんと別れ、自宅へと向かった。



さっきより足取りは軽い。



私はすっかり日が昇った空を目を細めて見た。



「ただいま」



静かに玄関のドアを開けて部屋に入った。



私は右側に掛かっている姿見の鏡で自分を見た。



私はホステス



鏡の中の私がそう言っている



…南さんは社長令嬢の結衣さんと結婚、か



泣いてしまったのは



南さんが正反対の人に思えたから



お水の、ホステスとなんか知り合いということさえ



私は許されるのか不安に思う



前にも、同じようなことがあったよね



大好きな人の邪魔になるから…私は嘘をついたんだっけ。



確かに鷹さんは私がホステスだと言っても私には何も言わなかったけど。



世間一般的には私は冷たくあしらわれる存在なんだから。



南さんのことが好きじゃない



とははっきり言いきれない



ニッと笑った笑顔とか



たまに見せる真剣な表情とか



ただのお客様とホステスという関係で十分私の気持ちは満たされる。



───ただ、それだけ。



私は着物を力なく脱いでソファーに放り投げた。



時計を見ればもうすぐ6時40分。



私は普段のアラームを一時間ずらして布団を頭まで被った。



「化粧落としてないや…」



今になってそんなことに気が付いて、私はノロノロとクレンジングシートを取り、顔を拭いた。



猫から人間に戻る瞬間



「あぁ」



私は考えたくなかった。



もし、私が猫でなかったら



仲島日向という人間なら



南さんはもっと私を見てくれたのかな



私は捨てられた猫のように



寒い段ボール箱の中で泣いた



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