モンスターハンター“敬憧の背中”
 
「チッチキチ〜?」

「チキ・チッキ!」

親指を突き出して首を傾げるニトロの言葉を、チキは両手を下に振り下ろし、必死に否定した。

「ああ、チキ・チッキね、ゴメンゴメン」

ハハと笑いながらニトロは頭を掻く。

「あ」

「ん?」

「あ、その……
お兄さん、“ピアス”付けてるんだ」

ニトロが頭を掻いた時に覗かせた耳元を見て、チキがそう呟く。

ニトロの左耳には、淡く翠色に輝く、雫のようなデザインのピアスがあった。

どこか神秘的な輝きを秘めたそれは、飾り気のない少年には不似合いな印象をチキは受けた。

「ああ、うん
ま、お守りみたいなもんかな」

「お守り?」

小首を傾げ聞き返すチキ。

「うん、ま、ちょっとね」

少年にしては珍しくぎこちなく笑う。

だが、天井を見上げた少年のその瞳には、遥か高みにある頂を見つめ輝く光が確かにあった。

天井よりも更に高いところにある何か……。

少年がその瞳に捉えているものは、ニトロ以外の誰にもわからなかった。

「………はっ」

チキはその瞳にしばし見とれた後、気付いたように声を上げ、そしておずおずと少年に本題を切り出した。

「その……ピアスを付けたままだと、頭の防具が着けられないの
だから、それは外してもらわないと……」
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