モンスターハンター“敬憧の背中”
「そうなの?
じゃあいいや、俺頭防具なしで」
あっけらかんと言い放つニトロに、チキは驚きを隠せない。
「えっ!?
でも……頭防具があるとないとじゃ、防御力はかなり違ってくるよ?」
「うん、でも、“こいつ”は俺の大事なものなんだ、ハンターをやるなら、これは外すわけにはいかない」
そっと耳に触れ、強い瞳でそう言う。
ニトロは、まだ駆け出しもいいところだが、否、まだ駆け出してすらいない若いハンターではあるが、彼には彼なりの“こだわり”というものがあるようだ。
まだ少女のチキとて、長い間武器屋で多くのハンター達を見て暮らしてきたのだ。
稀に、ハンターにはそれぞれそういった“こだわり”を持つ者がいるということを理解していたし、武器屋の娘がそれに口だしするのは不粋だということもよく理解していた。
「そっか、じゃあ、頭はいいね」
なので、少女はそれ以上その話題には触れず、黙々と採寸を再開した。
5分と経たずに作業は終わり、少年は再び店内に戻り、少女は熊親父と共に、更に店の奥へ入って行った。