モンスターハンター“敬憧の背中”
「さてと、戦う前に一言断っとくが……俺は、今回まともに戦う気はない、あくまでも後方支援として戦いに参加し、それも、積極的には行わない」
ヒューズは【薬草】を採りながら、ニトロの顔を見ずにそう告げる。
「なんで?」
当然の疑問だ。
それをヒューズもわかっていたのだろう、直ぐさま答えを返す。
「今回のクエストはおまえの試金石だからさ」
「しきん……なに?」
「試金石
ま、ようするにおまえを試すってわけさ
俺のパートナーに相応しいかどうかを、な」
そこにある【薬草】を採り尽くしたのか、ヒューズは立ち上がる。
「おまえがどれだけ戦えるのか、それを見る
だから、最低限の協力しかしねぇ
俺が本気で掛かりゃ“クック”を倒すのなんざわけねぇが、それじゃ意味ないからな」
「……俺が、ヒューズのお眼鏡に適わなかった時は?」
「そん時ゃ、まぁお別れだな」
何食わぬ顔で肩を竦めながらサラリと言う。
「おっと!安心しろよ
もしそうなっても、防具代請求したりはしねぇから
俺は気前がいいんだ」
ニッと笑うヒューズを見て、ニトロは何となくわかってきた。
ヒューズはおそらく、今回のようなことを何度も繰り返しているのだ。
そして、今までヒューズの試験を合格した者はいなかった……。
だからヒューズは、一人でハンターズギルドの集会所に居たのだろう。
「じゃ、せいぜい気に入って貰えるように頑張るさ」
そう笑い返すニトロの瞳は、とても力強かった。
「ああ、期待してるぜ
……ちょうどよく、“奴さん”もお出ましのようだしな」
そう言い、顎で天を指す。
「え?」
つられて見上げたニトロの視界には、飛翔する一体の竜の姿が映っていた。