モンスターハンター“敬憧の背中”
最初に目についたのは、体表のほぼ全てを覆う桃色の甲殻と鱗。
そのピンク色の、なんと色鮮やかなことか。
ゆっくりと降下してくる大怪鳥、未だこちらに気付いてはいない。
初の戦いを前にして、ニトロは意外な程に落ち着いていた。
平静な心に、ほんの少しの緊張と、ほんの少しの興奮を付け加えた状態。
理想的な、戦いに臨むにあたって、理想的な心境だ。
着地した怪鳥と目が合った。
『ク、エエェェェ』
甲高い鳴き声と共に翼を広げ威嚇してくる。
その威嚇に、ニトロはつい身を強張らせた。
普段は大人しく、虫やミミズ等を食べて生活している『イャンクック』だが、縄張りを侵すハンターには、容赦なく敢然と立ち向かって来る。
「……デケェ」
遠くでヒューズが呟いた。
今回討伐する『イャンクック』の全長、実に約1122cm。
数多くいる『イャンクック』の中でも破格の大きさ……“キングサイズ”だ。
大きければ大きい程、当然それだけ手強くなる。
攻撃は重く、リーチは長く、そして耐久性も高くなるからだ。
正面から『イャンクック』の顔面を見据えたニトロからは、怪鳥の顔は【巨大なクチバシ】しか見えなかった。
その顔の輪郭から、【怪鳥の耳】が花開く。
敵と見なされたのだ。
戦いが……始まる。