モンスターハンター“敬憧の背中”
ニトロが持つ武器、そしてニトロが纏う空気に、ヒューズは決して小さくはない期待を抱いていた。
“彼こそが、自分が探している人材なのではないか”と。
それだけに、それが期待外れに終わったとわかった時の、彼の落胆ぶりは酷かった。
「やれやれだ」
緩慢な動作でボウガンを構え、スコープを覗き込んだ。
当然、ここは照準を『イャンクック』に合わせる場面だ。
だがヒューズは何故か、照準をニトロに合わせ、スコープを使って表情を確認した。
ふと、今あの少年がどんな表情をしているのか見たくなった。
とまぁ、敢えて理由を付けるならこんなところだろう。
それは好奇心によるものだったのか、それとも何かを期待しての行動だったのか。
ヒューズの、その何気ない行動の結果得たものは……
「あいつ……笑ってやがる」
少年の微笑だった。
狭いスコープの視界の中で、所狭しと動き回る為わかりづらいが、ニトロの顔には、確かに笑顔が貼付けてあった。
ヒューズは食い入るようにスコープを覗き込み、また新たな発見をする。
「何か……喋ってる?
あいつ、何一人でブツブツ言ってやがんだ?」
怪鳥の猛攻に曝されながら、少年は笑い、そして何かを呟いていた。
そこで、ようやくヒューズはある事実に気付いた。
戦い始めて数分も経つというのに、『イャンクック』だけではなく、少年もまた、全くダメージを受けていないということに。