恋する猫は、月の下~母さんの昔話~
「ちょっと!リク!聞いてるのかい!?」

花嫁の想像に気を遠くしていたリクは、おかみさんに呼ばれ、ハッとして我にかえりました。

「は、はい。あの、何か…」


「何かじゃありませんよ。まったく、ぼーっとして」

「はい…すみません」

「さっき、花嫁の実家から嫁入り道具一式が届いたから、目録通りの物が届いているか確認してきておくれ」


「はい、わかりました」

「あぁ、まったく、忙しいったらありゃしない。猫の手でも借りたいくらいですよ」

おかみさんは、せわしなく言い捨て

花嫁道具の詳細が記されている目録をリクに渡すと、慌ただしく去っていきました。
< 51 / 72 >

この作品をシェア

pagetop