恋する猫は、月の下~花の名のキミ~
「空を、見てるの?」

彼に聞かれ、あたしは答えた。

「空じゃなくて…多分、雲を見てるの」

多分、なんておかしな使い方だったかな…

あたしが眉をひそめると、彼は嬉しそうに顔をほころばせた。

「僕もなんだ。よく空を見るんだけど、本当は雲を見ているんだ。

白い雲を見ていると、妹を思い出すんだよ」

「妹さん?」

「うん。大切なたった一人の妹だった。絵かきに恋をして出て行ってしまったけど…

それっきり姿は見てない。妹は…自分の絵を描いてもらいたがってたんだ」


彼が遠くの白い雲を見つめた。


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