恋する猫は、月の下~花の名のキミ~
彼は、寂しさを封じ込めた深い瞳に、愛しさを浮かべ

「おいで」

あたしに両手を差し出した。

腰が抜けたみたいに、いつまでも座り込んでいるあたしに

彼はゆっくり近づき 、そっと抱きかかえた。

彼の大きな両手で体を優しくしめつけられると

きゅーっと胸の奥がうずき、思わず

「フニャァァァ~…」


どこにも力が入らない情けない鳴き声がこぼれた。


くすりと笑った彼は

「可愛い」

そう言って、あたしに頬をすり寄せた。


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