恋する猫は、月の下~花の名のキミ~
「やあ、また会えたね」

昨日と同じ。

しみるような優しい声。

あたしは固い体を、なんとか動かし、声が降ってきた頭上に視線を向けた。


緊張しすぎて、声も出せないあたしに

「こんにちは」

彼は、にこやかに微笑んだ。

「こん、にちは…」

喉の奥から、やっと引っ張りあげたぎこちない挨拶が恥ずかしくて


あたしは慌てて下を向いた。


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